【養生編】アスベスト除去作業の基準と実例|シート厚、材質、レベル別解説

【養生編】アスベスト除去作業の基準と実例|シート厚、材質、レベル別解説 アスベスト
  • アスベスト撤去の養生作業、正しい決まりがわからない。
  • 公的な基準に準拠したアスベスト撤去が求められている。
  • 養生検査や写真撮影があると言われたが、どういう養生をすればよいのか?

建築現場で、このような課題を持っていないでしょうか?
この記事では、アスベスト除去工事を検査に通すための基準や方法を、厚生労働省・環境省のマニュアルや図解を交えながら、実際の現場写真を使って解説します。
この記事を読むことで、やり直しの防止や指導リスクの低減、打ち合わせでの説得力の獲得に役立ちます。

撤去作業全般に関する記事は、下記のリンクを参照してください。

前提条件:作業に必要な資格について

※アスベスト関連作業には、法令で定められた以下の資格が必要です。

アスベスト作業の必要資格
  • 事前調査の必要資格
  • 解体、改造、補修、改修、除去、封じ込め、囲い込み等の必要資格
    • 石綿作業主任者
      • 石綿が0.1%以上含有している物に関わる作業には選任が必要。
        (労働安全衛生法施行令第6条第二十三号及び石綿則第19条要約)
    • 石綿取扱作業従事者
      • 石綿使用建築物等解体等業務特別教育を受講した者。
      • 石綿作業主任者の指示のもとで作業を行う役割。
  • 産業廃棄物取扱いの必要資格
    • 特別管理産業廃棄物管理責任者
      • 建築工事のアスベスト作業においては『廃石綿等(主にレベル1、2)』の
        計画、管理、運搬、委託管理などをする際に必要。(現場ごとに必要な点に注意)
        詳しい区分→東京都環境局「特別管理産業廃棄物とは」

レベルによる養生の区分:一覧と説明

アスベスト除去作業では通常の解体作業以上に入念な養生が求められますが、養生の方法と使用する養生材は、公的な基準により分類が決められています。

アスベスト除去作業のレベルと対応した養生リスト

負圧隔離養生【レベル1,2】

壁面:0.08mm以上(1重) 床面:0.15mm以上(2重)

レベル1(主に吹付材)レベル2(主に断熱材)の撤去作業では、負圧設備とセキュリティゾーンを設けた『負圧隔離養生』を行います。
これにおける養生材は『プラスチックシート 壁面0.08mm以上、床面0.15mm以上(2重)』と規定されています。

この厚みの理由について『徹底マニュアル』では「負圧化に耐えるため」としています。
『負圧』は部屋の外に向かって空気が吸い上げられている状態のため、それにより養生が影響を受けないよう、強固に留め付けなければいけません。

また、確実な隔離を行うために30~45cmの留めしろを確保することも記述されています。
養生検査や書類検査で確実に見られる箇所なので、必ず写真を残してください。

セキュリティゾーン

負圧隔離養生では作業場所への出入口の前室として、単管パイプや塩ビ管などで作った囲いを養生で密閉し、セキュリティゾーンを作ります。
セキュリティゾーンの内部にはエアシャワーを設置が必要です。
作業員が外へ出る際、身体の洗浄を行い、粉じんを持ち出さないためです。

セキュリティゾーンとは別に、作業部屋の内部を負圧にするための排気装置を設置します。
排気装置は作業部屋の中に置き、排気ダクトを使い、フィルターを通した空気を外部に放出させるのが一般的です。
負圧の強さにおいて『徹底マニュアル』では、-2~-5Paとされています。

排気装置のフィルタの不備、付け忘れ、密閉不足などは、作業前、作業中ともにこまめなチェックを行って下さい。
実際に、排気装置周りのチェックが甘かったため、作業中に排気用の筒が抜け落ち、外部に排気が漏れた事例が起きています。

隔離養生(負圧不要)

ケイ酸カルシウム板は、レベル3扱いでも隔離養生

レベル3に分類される『ケイ酸カルシウム板第1種』の解体では多くの場合、通常の養生ではなく隔離養生(負圧不要)が義務付けられます。

具体的には、解体作業に「切断、破砕、穿孔、研磨等」が含まれる際に隔離養生(負圧不要)を行うことになっています。
通常の解体工法であればほぼ確実にこれらの作業が含まれるため、隔離養生の検討を行ってください。

隔離養生(負圧不要)の方法
  • 屋内の養生方法
    • 壁、床、天井に貫通部、開口部がある場合は、隙間をプラスチックシートで塞ぐ。
    • 建具、窓、換気口、空調吹出口などの開口部を目張りする。
    • 出入口はプラスチックシートを垂らして塞ぐ。
    • 床面は破片回収などのためプラスチックシートを敷く。
    • 壁面も汚れ防止のためにプラスチックシートで養生することが望ましい。
  • 屋外の養生方法
    • 建物側(外壁など)と上下(天井部、床部)は通気性のないシート(プラスチックシートなど)を使う。
    • 養生の外周側は通気性のないパネル(防音パネルなど)か、通気性のないシートで塞ぐ。
    • 出入口はプラスチックシートを垂らす。

現場では「手間がかかる」「予算を組んでいない」「ルールをよく知らなかった」といった理由で隔離養生が省略されがちです。
しかし、作業が終わってから、検査で「隔離養生は行いましたか?写真はありますか?」と問われてからでは、取り返しがつかないため、事前の計画と準備を徹底してください。

隔離養生を省略できる例外:『原形のまま取り外し』

隔離養生を省略できる手段として『原形のまま取り外し』という工法があります。

これについて、『徹底マニュアル』には「原形のまま取り外すとは、ボルトや釘などを撤去し、手作業で取り外すこと」とあり、この条件を満たせる場合に限り、隔離養生は不要です。
しかし、実際の作業において「割る、折る、切る」を行わないのは困難であり、経年劣化した成形版が折れる、割れる可能性を否定することができません。

このような理由から、ケイ酸カルシウム板第1種が含まれる解体工事では「隔離養生(負圧不要)」を検討事項に含めるようにしてください。
特に、公共工事では設計段階でほぼ必ず隔離養生が指定されています。

ケイ酸カルシウム板第1種と第2種の違いと見分け方

ケイ酸カルシウム板第1種(レベル3)【隔離養生(負圧不要)】

主に天井や壁といった内装材に使われる薄くて硬いボードです。
軒下、トイレ、厨房などでよく見られます。

ケイ酸カルシウム板第1種の特徴
  • 厚みは5mm~12mmが一般的で、内装材、特に天井に多く使われる。
  • 石こうボードや木合板と比べて、かなり重い。
ケイ酸カルシウム板第2種(レベル2)【負圧隔離養生】

主にコンクリート造の上下階や、壁を貫通する配管周りの耐火材などに使われます。
一般的な建物の居室で使われることは稀で、工場やプラントの地下室、電気室などで見かけることがあります。

ケイ酸カルシウム板第2種の特徴
  • コンクリート造の天井・壁貫通部に対し、耐火材として蓋のような使われ方をする。
  • 40mm前後と非常に厚みがある。
  • 厚みに対して軽く、持つと同じ体積の材木のように感じられる。
  • 脆く、指で触るだけで手が粉で真っ白になる。

通常の養生

『ケイ酸カルシウム板第1種』以外のレベル3建材や、『電動工具を用いない石綿含有仕上塗材除去』で適用される養生方法です。
公的な基準には『通常の養生』という用語は存在しませんが、この記事では「一般的に行われている養生」という意味で『通常の養生』と表現します。

求められる程度|定義がない=やらなくて良い とはならない。

『ケイ酸カルシウム板第1種』以外のレベル3建材に対する養生方法について、具体的な基準はありません。
ただし、アスベスト除去作業においては「発生した粉じんを残さない」という大原則が根底にあるため、これを守るための養生は必ず行う必要があります。
(アスベスト関わらず、撤去作業で周囲を汚さない配慮は基本ではあります。)

アスベスト撤去における養生の考え方
  • 見える、見えないに関わらず粉じんは必ず発生する。
  • 粉じん以外でも、撤去材の破片は残さない。
  • 作業場の外に飛散させない。
  • 作業場内でも、飛散や壁、床、天井、備品などに粉じんを付着させない。

特に床面に関しては、「清掃を減らすための受け皿」という役割も兼ねているため、全面に行ってください。
「終わってから全面清掃」というのは、とても労力と時間を要します。
面倒だと思えても、事前に丁寧な養生をしておくと、そうでない時と比べて金銭的にも時間的にも有利になります。
特にアスベスト作業は、作業完了後に清掃不備があると「別の場所も汚れているのではないか?」という追及が起きる可能性が高く、過剰なアフターフォローを要求されても反論ができません。

おすすめなのは、以下の方法です。

[床面] 作業場の汚損を防ぎやすい養生方法
  • 1重目:ビニールシート(ポリフィルム)
    • 密閉性確保(粉じんの受け皿)
    • 厚みに規定はないが、歩行や脚立設置程度で破れない物にすること。
      • マスカーや塗装養生用(0.03mmなど)では薄すぎる。
    • 滑りやすいため、表層には使いにくい。(下敷きとして使う)
  • 2重目:ブルーシート
    • 破れにくい、滑りにくい
    • 網目があるため粉じんが漏れやすい

シャフトを使った簡易区画

狭い範囲のみが解体対象となっている場合は、シャフトを使った部分的な区画養生が早くて便利です。
作業対象とする箇所の周囲に支柱を立て、ビニールハウス状にすることで、清掃範囲も養生材の使用も最低限で済みます。

例外:設計図書(図面)や特記仕様書で指定がある場合

公共工事では、レベルや除去対象の建材種類に限らず、特定の養生方法を指定されている場合があります。
実際に多いのは、レベル3の撤去作業において、建材問わず『隔離養生(負圧不要)』を指定しているパターンです。

このような場合は、図面や仕様書、内訳書に記載があるはずですので、公共工事を請ける際は設計図書の隅まで確認するようにしてください。
積算や見積り時に「通常の養生で良いだろう」と見落とすと、逃げ場のない損失を被ることになります。

養生材の種類と選定方法

養生の「プラスチックシート」とは? ポリエチレンでOKな理由

『徹底マニュアル』や公共工事の仕様書では、「プラスチックシート」という材料が指定されていますが、どのような養生材ならよいのでしょうか?

これに対する結論は「ビニール系の製品なら何でもよい」です。
「プラスチック」とは、「ビニール」や「ポリエチレン」などの樹脂製品を総称です。
規定の厚みと密閉性を満たしているなら「ビニールシート」「ポリエチレンシート」「ポリフィルム」「土間シート」といった製品は全て使用可能です。

シャープ表記の数値は『厚み』ではない。厚みの証明不能な製品に注意

負圧隔離養生に使うポリエチレンシートには、法令で定められた「厚み」が必要です。
しかし、「アスベスト専用」という規定まではなく、基準の厚みを満たし、室内を負圧にできる密閉性さえあれば使用可能です。

アスベスト専用シートは一般店舗での入手が難しいため、現場での在庫切れ時にはホームセンター等の市販品が役立ちます。
ただ、その際は必ずmm単位での厚みを確認してください。
特に注意すべきは、『#〇〇(番手)』で表記された製品です

『#〇〇(番手)』はJISなどの公的な規格ではなく、シート製造業界の通称であり、『#』と『ミリメートル』の換算式を定めた基準はありません。
よって、#の数値だけで厚みを証明することはできません

例えばブルーシートには重さを基準とした数値を『#〇〇(番手)』で表記する商習慣がありますが、ポリエチレンシートの場合、用途や製品によって基準がバラバラです。
そのため、#番手表記の製品を使う場合は、必ず製品名をweb検索するなどして、メーカーカタログ等から「mm単位の厚み」が保証されているかを確認してください。

また、値札シールに記載された厚みは店舗が独自に付けた可能性があり、確実に正しい保証がありません。
過去、値札に「#15 0.15mm 〇〇円」とあり、店員に聞くと「厚みは合っている」と言われたにも関わらず、ネット検索で製品を調べたら、それよりもずっと薄かったことがありました。

ネット検索でも正確な厚みが出てこない、あるいは「通販ページしかヒットしない」のように、信頼できる情報源がない製品も少なくありません。
養生検査のある現場では、証明を求められた際に困らないよう「疑わしきは使わない」という安全策で挑むことをおすすめします。

まとめ:この記事の内容

アスベスト養生は検査でも細かく見られやすい重要な工程です。
この記事を読み、不合格や指摘を防止する適切な養生を確認してください。

  • レベル1、2は負圧隔離養生
    • 床面は厚0.15mm以上2重、壁面は厚0.08mm以上。開口箇所も密閉。
    • 30cm~45cmの重ねしろを確保し、写真も残しておく。
    • セキュリティゾーンとエアシャワーを設置。
    • 室内の負圧は-2~-5Pa。作業中もこまめに点検し、室外に空気を漏らさない。
  • ケイ酸カルシウム板第1種、外壁を電動工具で撤去する際は隔離養生(負圧不要)
    • 材質の規定はないが、簡単に破れないシートを使う。
    • 建具、窓、換気口など開口部は全て目張り。
    • 床面は全て養生。壁面も行うことが望ましい。
  • その他のレベル3建材は通常の養生で良い
    • 養生自体は必ず必要。室外に粉じんを持ち出さない養生が最低限求められる。
    • 後から清掃漏れが発覚すると信用を失うリスクが高い。破片や粉の受け皿となる養生を行う。

参考資料とガイドライン

アスベスト関連の記事は、以下の参考資料に基づいて作成しています。

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