入札辞退の文例を理由別に解説。そのまま使える角が立たない断り方

入札辞退のやり方とは?~辞退札の文例~ 施工事例・手順

「入札の指名が来たけど、この案件は無理だ。どうやって断ろう…?」
そんな風に頭を悩ませた経験はありませんか?

放置して「不参加」となってしまったり、依頼を無視したりするのは、発注者からの信用を失うため避けるべき対応です。
お互いのためにも、理由を添えて丁寧に「辞退」の意思を伝えることが不可欠です。

この記事では、「会社が多忙」「採算が合わない」「経験がない」など、具体的な理由ごとに使える入札辞退の文例を多数紹介します。
事例に応じて少し修正するだけで、すぐに使える丁寧な辞退文が完成します。

入札工事は仕事のオークション

公共工事 では、一定以上の金額の工事を発注する際、公平性の確保や一社による独占を防ぐために
参加資格のある業者に工事価格を提示させ、金額の安い業者と契約を行う入札』の形式を取ります。

安く仕事をする業者に仕事を与えるシステムであるため、仕事や実績欲しさに極端に安い価格を提示する業者も存在します。
しかしこれは行き過ぎた低価格競争や、価格を下げすぎた事による労働環境の悪化や欠陥工事を誘発する温床である『ダンピング』と呼ばれ、禁止されています。

『不参加』は絶対ダメ、できない工事は『辞退』しよう

入札は公共機関から声が掛かり、それに応えて参加をする形となりますが、全ての入札工事を引き受けられる業者は恐らく稀であり、入札工事のいくつかは断ることになると思います。

断る理由は様々ですが、入札においては「このような理由でできないため、降ります」という意思表示の『辞退札』を入れずに放置した場合、入札を行わなかった『不参加』という扱いになってしまいます。

不参加』は、仕事を持ち掛けてくれた相手に対し、無視をしたのと同義になってしまうため、工事ができなくて断ることになる際も、しっかり理由を伝えて辞退札を入れる、というアクションが大切です。

入札辞退理由の文例

ここにある文例は参考例であり、画一的に「このようにしなければいけない」というものではありません。
仕事を断る際に「なぜできないか」を説明する事は、情報共有として相手のためにも自社のためにもなる事ですので、本当の事を自分の言葉で書くことが大切です。

会社が忙しい時の辞退理由例

パターン1

現在、弊社にて別件工事を複数受注しており、対応できる技術者が不足しているため、辞退させて頂きます。

パターン2

現在、弊社では(〇件)(〇月〇日まで)の別件工事を行っており、本件工事と兼務を行った場合、現場管理が十分に行えない事が予測されるため、大変恐縮ですが、辞退させて頂きます。

公共工事 は(公共でなくてもそうですが)一度契約した工事は、絶対に工期までにやり遂げなければいけません。
もし、途中で間に合わなくなったり、続行が不可能になった場合は契約違反となり、指名停止(今後の仕事がもらえなくなる)や反則金などの厳しい罰則が定められています。
そうならないためにも、無理な予定で工事を請け負うのは避け、きちんと辞退することが大切です。

採算が合わない時の辞退理由例

パターン1

弊社にて積算させて頂いたところ、工事予定価格を超過したため、恐縮ですが辞退致します。(弊社積算価格 〇〇〇〇円【参考】)

工事は大きな金額の伴う業務ですので、相手の提示する金額がそもそも合わない場合は辞退することになります。
これは必ずしも値切られているという訳ではなく、発注側と業者間との相場感覚の認識の相違などで、安すぎる金額で出てしまっている場合もあるため、
その際は、こちら側の見積り価格が出ている時は、きちんと「この金額でないとできません」という内容を、参考までに伝えると良いでしょう。

工事期間が短い場合の辞退理由例

パターン1

予定工期〇月〇日~〇月〇日において、予定されている期間が短く、十分な品質が確保できない可能性が考えられるため、申し訳ございませんが辞退させて頂きます。

パターン2

本工事にて使用が計画されている材料〇〇について、現在、手配が付きづらい状態となっており、納品・設置を含めた予定工期内での工事完了が困難につき、辞退させて頂きます。

工期が短すぎて工事ができない場合の文例です。

世間の情勢などで起こる事のある鋼材不足、木材不足、災害、流通の遅延なども立派な辞退理由のため、見積り段階で既に予測されている場合は、安易に引き受けて続行不能となるよりも、辞退をした方が賢明です。
ただし、事前予測ができず工事を受けた後で発生した問題については、発注者と工期の延伸を協議することができます。

問題の報告と共有は、発生から早ければ早いほど解決の可能性が高くなるということです。

経験がない、対応できない工事の辞退理由例

パターン1

工事設計内における、〇〇の設置につきまして、弊社では対応不可能な資材を使用するため、経験の要求される品質管理が困難につき、恐縮ですが辞退いたします。

パターン2

拝見した工事仕様につきまして、弊社にて実績が無く、適正な現場管理および品質確保が困難であると予測されるため、恐縮ですが辞退いたします。

例えば、壁紙貼りや塗装工事などの業者に「高層エレベーターを作りたい」と言っても、当然「やったことないからできません」となります。

「わからないからできない」は恥ずかしい事ではなく、正直に伝える方がよほど重要です。
専門性の高い分野へ、無理に手を出して大変な事にならないために、辞退するための文例です。

その他、施工条件が悪い、与えられた設計では難しいなどの辞退理由例

パターン1

本工事におけるコンクリート打設において、当該施設は立地上、駐車スペースがなく周辺道路も狭小であるため、ミキサー車及びポンプ車の設置が困難であり、適正な施工が行えない事が予測されるため、恐縮ですが辞退いたします。

パターン2

計画されているトイレ工事につきまして、2階トイレの配管改修工事において、下層階の天井解体が必要な規模であると予測されますが、設計図書上では行わないこととなっており、適正な施工が行えない事が予測されるため、恐縮ですが辞退いたします。

立地上難しすぎる工事や、図面上明らかに厳しい工事などは、受注した後で大変な苦労をするより、事前に辞退して設計や予算を見直してもらうのも一つの方法です。
そのようなパターンも辞退の理由となります。

補足:内訳書の添付が面倒?

発注省庁や部署によっては、「辞退理由が予算の場合は、参考までに内訳書を提出願います。」のような要望がフォームに記載されていることがあります。
義務ではないのでしょうが、お願いされているのにそれを無視するのも気が引けますよね。

しかしこれ、内訳書の提出方法が「pdfが添付できない」や「テキスト入力欄しかない」や「添付ファイルの容量上限がとてつもなく低い」などで非常に面倒くさいことがあります。

ただの参考程度のために、貴重な時間を費やして内訳書を提出できるフォーマットで作り直す意味はあるでしょうか?

「主要下請負業者の予定が取れず、工期内に完了させることが難しいため、辞退いたします。」のようにした方が楽かもしれませんね。

発注機関はきちんと読んでいる

筆者は公共工事を行うことが多いですが、できない工事は当然辞退文を提出し辞退します。
しかし、参加者全員が辞退し、やり手が付かない(=不調)となった際、自治体の担当者から「お忙しいと伺ったのですが、いつ頃の発注なら参加できるでしょうか…?」などと連絡が来ることがあります。

担当者には気の毒ですが、このようにきちんと読んでもらっており、次の仕事に繋がる事もあるため、辞退文は誠意の証明としても重要と言えます。

もし不参加になってしまったら

公共工事は公平であるため、もし『不参加』になっても評価が落ちたり、今後の仕事を制限される、といったことはありません。
ただし、発注を行う担当者は人間ですので「この会社はいつも不参加だ」というような印象を持つこともあるかもしれません。


民間工事も公共工事も同じお客様ですので、入札を無視してしまい『不参加』となってしまったら、声をかけてくれた担当課へお詫びに行く、などの対応も大切な仕事の一つであると言えます。

この記事の要点

  • 公共工事 は入札により発注する業者を決める。
  • 入札 は公共機関から声が掛かり、理由もなく札を入れないと『不参加』扱いとなってしまう。
  • できない工事は無視をせず、理由を伝え『辞退』の意思表示をすること。
  • 正しい理由を伝えて辞退して断ることは、悪い事ではなく、発注者との関係のためにも大切。

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