この記事は解体・改修工事における石綿含有建材の撤去工程の計画書として必要な『石綿除去工事作業計画書』の、テンプレートを用いた実際の書き方を解説します。
石綿除去工事作業計画書のテンプレート
この記事で解説する石綿除去工事作業計画書は、Excelで編集できるテンプレートを配布しています。
以下よりダウンロードしてください。
また、この記事には作成に取り掛かる前の基礎知識である「①基本編」も用意しているため、そちらも参照してください。
作業計画書の記載項目
作成に係る必要項目は、環境省が配布している「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」(以下、徹底マニュアル)に記載されている通りです。
詳細は、前回の記事にて説明しているので、参照してください。
全ての作業計画で必要な記載事項
- 1 工事の概要(工事の情報を網羅する)
- 2 石綿含有建材除去等作業(除去工事の内容)
- 3 石綿飛散防止措置(具体的手順と作業方法)
- 4 工事の工程表
- 5 施工体制
- 6 安全衛生(保護衣の使用状況、災害防止対策)
工事概要
(画像は拡大できます)工事概要として、以下の項目を記載します。
工事概要
- 工事件名
- 現場住所
- 工事内容
工事全体の内容(改修工事であれば工事全体の内容、目的) - 石綿除去工事内容
この計画書で定義する、アスベスト除去の内容、目的 - 工期
アスベスト除去を含めた工事全体の工期 - 発注者名
発注者の組織名、オーナー名、会社名など - 元請業者名
- 施工業者名
- 案内図
現場がどこに所在するかを示す地図を添付
また、作成にあたり参照すべきドキュメント(各種法令、公的マニュアル)も載せておくと説得力が増すため推奨します。
(作業が日本で行われる以上、どの道参照すべき資料ですので、載せておいて不備はありません。)
案内図の作成は、Google Mapなどの地図をwindows標準機能のSnipping Toolで切り抜くと簡単です。
作業箇所図及び入退場経路
(画像は拡大できます)
- 作業者はどこから入り、どのように退出するか
- 作業箇所はどこか
- 駐車場、廃棄物保管場所など平面図で表せる要素
上記の項目を記載します。
図で表すことで位置関係などがわかりやすくなります。
対策の概要
(画像は拡大できます)この工事のアスベスト処理が、どのレベルであり、どの程度の対策が要求されるかの根拠を記載します。
アスベスト処理は法規制で行われているため「なぜその養生か」「飛散防止剤は必要か不要か」などの判断根拠を示す事はとても重要です。
これについては「徹底マニュアル」の80~83ページ(令和6年3月改訂版)の概要表を引用し、工事に該当する部分を赤枠などで示せば、1回で何が必要か網羅的に表せるため推奨です。
作業箇所一覧
(画像は拡大できます)
- 施工部位、施工数量
- 建材のレベル
- 除去等の方法として
除去、囲い込み、封じ込め - 粉じんの発散防止又は抑制方法として
養生の種類(隔離養生、負圧隔離) - 各箇所の作業工期
これらの項目を記載します。
作業に関する注意事項があれば、備考欄に書いておきましょう。
作業順序(フロー)
(画像は拡大できます)石綿除去工事の前後の流れや、方法の順序を記載します。
フロー形式にするとわかりやすいです。
フローと言っても、ITシステムの運用マニュアルのような、様々な図形を用いた複雑なフローチャートである必要はありません。
作業の連携(からみ)や前後関係がわかるような、一直線で流れるイベント順で問題ありません。
画像のような『大カテゴリ』→『補足説明』の書き方が書き手・読み手の双方にとって理解しやすいと思います。
作業方法
(画像は全て拡大できます)
前項の「作業順序(フロー)」で定義した大まかな作業カテゴリの詳細説明を、絵と文章で行います。
文章と言うと難しそうですが、テンプレート内に汎用的な事例が入っていますので、一部流用し、その他思いついた事柄を埋めていけば比較的簡単に作れると思います。
テンプレート内の画像も、計画書の中であれば自由に使用して構いません。
この章で以下の項目を網羅しておくのが良いです。
『作業方法』で書いておきたい項目
- 看板掲示の方法
何の看板をどこに掲示するのか、時期はいつ頃か - 立入禁止措置の方法
誰を対象にした措置か、どこに何を使って禁止措置を行うか - 除去作業の方法
何を使うか(主な道具)
どのように除去するか(分解、手ばらし)
その他注意事項(撤去しない場所、通電中など危険個所、破砕を行わないなど) - 養生の形状、方法
何を使うか(養生材の種類)
どのような養生か(隔離養生、部分養生など)
その他注意事項(養生検査は行うのかなど) - 湿潤化の方法
道具は何か(エアレススプレイヤー、手動噴霧器)
湿潤剤は何か(散水、飛散防止剤)
いつ行うか(養生後、除去作業中、養生撤去前など) - 保護衣の有無と使用状況
保護衣を使用するか、しないか
使用する保護衣の種類(JIS T 8115 認定品)
防塵マスクの種類(国家検定合格品 RL3又はRS3)
その他、何を着用すべきか(手袋、足袋、ゴーグル、メット) - 清掃の方法
何を使うか(掃き掃除、水拭き、HEPAフィルタ付き真空掃除機など) - 取り残しの有無の確認
作業後の確認
事後検査など
作業工程
(画像は拡大できます)アスベスト除去作業に関連する作業工程表を添付します。
別途、全体工程表などで示されている場合は、重複して作成しなくてもそちらの添付で良いかもしれません。
安全衛生管理体制
(画像は拡大できます)アスベスト除去関連の組織図を作ります。
以下の項目が網羅されている事が推奨されます。
- 発注者
団体、住所、連絡先、担当者 - 履行場所(現場施設)
施設名、住所、連絡先、担当者 - 元請業者
業者名、住所、連絡先、代表名、現場代理人、安全衛生責任者
石綿作業主任者(いる場合) - 施工業者(アスベスト工事をする業者)
業者名、住所、連絡先、代表名、現場代理人、安全衛生責任者
石綿作業主任者(絶対必要)
→元請業者が施工業者を兼ねる場合は記載無し - 作業環境測定機関
空気中浮遊石綿濃度測定を行う場合は、その業者の情報
許可番号まで記載するのが望ましい - 産業廃棄物管理(収集運搬)
- 産業廃棄物管理(収集運搬・処分)
各運搬業者、処分業者(最終処分場)について記載
運搬許可は積込み、積降し双方の都道府県許可が必要→解説記事
廃石綿等(レベル1)の場合は『特別管理産業廃棄物管理責任者』資格が必要
使用機器等・安全衛生事項
(画像は拡大できます)具体的な使用資機材の記載をここで行います。
自身で用意するのではなく「下請負先に聞かないとわからない」などの場合は、最低限、規則では何を使用しなければならないか、を押さえて書いておくと良いでしょう。
安全衛生事項は、考えられる安全対策を記載します。
高所作業が無いのにフルハーネスについて書いてある、などが矛盾になる項目は除いておくのが良いかもしれません。
石綿除去工事における産業廃棄物処理計画
(画像は拡大できます)アスベスト廃棄物について、以下の項目を記載します。
- 梱包方法
2重袋詰め、袋の種類(透明、黄色)
フレコンバッグの使用 - 廃棄物へ、アスベスト含有である旨の明記
- 保管場所の掲示方法、持出し禁止の明記
混同防止についての記載 - どこへ保管するか、雨天、強風時に影響がないか
- 石綿含有として扱うものは何か、扱わない物は何か
作業中副次的に発生した資材(木材下地、補強金物など)はどうするか - 搬出車両の扱い
過積載の防止、車両誘導の有無など - 搬出先への通知(アスベストである旨の連絡、契約書の作成)
- マニフェストの扱い
- その他
追跡写真の有無など
空気中浮遊石綿濃度測定計画
空気中浮遊石綿濃度測定(アスベスト濃度測定)を行う場合、その計画を記載します。
「測定についての技術的な事項」と言うよりも「建築工事においてどのような内容で測定するか」を記してください。
- 測定箇所
現場のどの位置で測定するか
敷地境界測定は行うか - 測定回数
測定タイミングはいつか(作業前・作業中・作業後) - 測定の扱い
速報がでたらどのように扱うか
結果が出て初めて次工程に移れる、などの制約はあるか - 結果について
望ましくない結果が出たらどうするか
補足:作業計画書に記載が必要な項目(徹底マニュアル)
【全ての作業で記載が必要な項目】
- 施工部位、施工数量
- 作業場、施工区画の明示
(立入禁止区画の明示と立入禁止措置方法) - 事前調査結果、作業内容、石綿の影響等に係る掲示の内容、方法、場所
- 作業者の入退場管理の方法
- 除去等の方法、手順(試験施工する場合はその手順を含む)
作業手順を変更した場合のルール
(作業者への周知、自治体・労働基準監督署への連絡(必要な場合)、計画の修正等) - 石綿等の粉じんの発散防止又は抑制方法
- 周辺への粉じん飛散防止方法(湿潤化の方法)
- 使用機器等(薬液等を含む)
- 清掃の方法
- 取り残しの有無等の確認方法(実施者、方法)
- 記録等の体制
- 廃棄物の処理の方法(除去された石綿の種類(廃石綿等又は石綿含有産業廃棄物)
処理方法及び廃棄物発生量の見込み
廃石綿等及び石綿含有産業廃棄物の一時保管の場所と保管方法及び掲示方法
処理施設の場所と運行経路(処理ルート)
産業廃棄物処理業(収集運搬と処分)の許可証
委託契約書の写しを添付 - 作業環境測定の方法(実施する場合)
- 大気環境測定の方法(実施する場合)
【負圧隔離養生を伴う除去作業での必要項目】
- 負圧隔離養生の方法
隔離シート等の設置方法、集じん・排気装置の設置方法
(台数、換気能力、気流の流れの計画等) - セキュリティゾーンの設置方法
- 作業終了時及び中断時に洗身を十分に行うことができる作業方法及び順序
(隔離空間における作業終了又は中断後から、休憩等の次の予定に移るまでの間に、隔離空間における作業に従事した労働者が一人一人身体に付着した石綿等を十分に洗い落とし、全員が退出することができる十分な時間が確保されていること) - 作業開始前の確認事項
(集じん・排気装置の事前点検、負圧状況の確認) - 作業中の確認事項
(機器の点検、集じん・排気装置のフィルタの交換頻度、負圧管理、保護具、漏えいが疑われる状況が確認された場合の対応方法) - 作業後の確認事項
(隔離空間内の清掃の方法、隔離空間内の粉じんの処理方法、薬液等の散布方法) - 隔離を解除する際に、石綿繊維が大気中へ排出され、又は飛散するおそれがないことの確認方法
- 事情により総繊維数濃度の測定を行わない場合はその事情を記載する
- グローブバックを使用する場合
グローブバッグの製品概要(シートの厚さ等)
除去作業開始前の密閉状況の点検方法
湿潤化の方法
グローブバッグを外す方法、グローブバッグから工具等を持ち出す際の方法
【隔離養生(負圧不要)を伴う除去作業の必要項目】
- 隔離養生の方法
- 石綿含有けい酸カルシウム板第1種を切断等により除去する際は、切断等以外の方法によることが技術上困難な理由及び切断等を行う箇所
- 石綿含有仕上塗材を電動工具を使用して除去を行う際は使用する電動工具等